■プライドは内的防衛機制から生まれる

プライドの社会学: 自己をデザインする夢 (筑摩選書)

プライドの社会学: 自己をデザインする夢 (筑摩選書)

奥井智之『プライドの社会学筑摩書房

奥井智之様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 新フロイト派のK・ホーナイは、フロイトの欲動論を批判して、社会的・文化的要因を重視しました。『神経症と人間の成長』のなかで、「プライド・システム」という概念を提起しています。
 自己には、「現実の自己」と「理想の自己」があって、もし「現実の自己」が、そのまま自己実現しているのであれば、人間の成長は健全であるでしょう。
 しかし、自己実現がはばまれている場合には、人間は、「不安」に襲われます。するとそのとき、「内的防衛機制」が働いて、自分を心理的に防衛しようとします。その防衛機制のひとつが、「自己の理想化」です。神々しい完璧さをそなえた人間に、自らを作り変えようとする。そのような自己への働きかけ=防衛機制を、ホーナイは「プライド・システム」と呼びました。
 それは道徳的というよりも、道徳を超える要求に答えるものでしょう。社会のなかで、たんに道徳的によしとされることをするのではなく、それ以上に、理想的な自分だったら何を成し遂げうるのか、ということを考えて、その要望に応える活動をすることになります。
 人はたんに、欲動に突き動かされているのではなく、不安に対する内的防衛機制を働かせる、だからプライドをもつようになる、ということですね。