■ ネット選挙は政治的関心を刺激するのか

ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容

ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容

西田亮介『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』東洋経済新報社

西田亮介様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 ネット選挙の解禁によって、これまでのような「均質な公平性」のもとでの選挙活動ではなく、自由な情報戦が可能になりました。その意味では、情報技術がある立候補者と、情報技術がない立候補者のあいだに、格差がうまれます。
 また、最新の情報技術や、その情報伝達がもたらす帰結は、予測しがたい点が多々あり、結果として、どういう問題が生まれるのか、ネット選挙を実際にやってみないと分からない点も多いでしょう。試行錯誤を積まなければ、何が公平なのかについても、事前には分からないという点が興味深いです。カール・ポパーが示唆するように、「漸進的な改良主義」でもって、システムを改良していくことが、望ましいわけです。
 ネット選挙がオープン・ガバメントの考え方と結びつくとすれば、政治は一歩前進するはずです。ただ実際問題として、韓国のケースでは、ネット選挙を解禁しても、投票率が上がったわけではなく、むしろ投票率は下がりましたね。ネット選挙は、政治的関心を刺激していない、という結果も出ています。ネットに感応的な若い世代の人々の割合が、人口比でみると少ないということも、一因でしょう。