■イギリス発のヨーロッパ構想

統合の終焉――EUの実像と論理

統合の終焉――EUの実像と論理

遠藤乾『統合の終焉 EUの実像と論理』岩波書店

遠藤乾様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 1988年に、サッチャーは、イギリス外務省が仕立てた演説のなかで、自らのヨーロッパ構想を語ります。それはいわば、分権的な統治の構想であり、フランスその他の国が提案する、垂直的な統合の構想と対立するものでした。
 イギリスの外務省は、この演説でのビジョンによって、イギリスが東欧諸国をECに取り込むための理念を提供できる、と考えました。ところが実際には、その意図は理解されず、EC統合のあり方そのものに批判を投げかけるものとみなされました。そもそもサッチャーがそのような懐疑的態度をとっていたため、ということですね。理想だけでは通用しない、政治の難しさがよくわかります。