■せっかくですから言葉で説明
- 作者: 橋爪大三郎,大澤真幸
- 出版社/メーカー: サンガ
- 発売日: 2013/10/28
- メディア: 新書
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橋爪大三郎様、大澤真幸様、ご恵存賜り、ありがとうございました。
本当に面白い本です。
一神教の場合、絶対者である神は、最初に言葉を発します。言葉は神から人間に与えられます。けれども人間の言葉は不完全で、神の言葉は完全であると想定されます。
これに対して仏教の場合は、「覚り」と「言葉」は、接続されていません。お釈迦さまは、覚った後、ことばを話さない。黙っている。
ただ、そこに梵天がやってきて、せっかくですから、その覚りを言葉で説明してください、とお願いする。それでお釈迦さまは、説法することになるわけですね。
仏教ではこうして、言葉では説明できない「覚り」の内容を、言葉で説明することになりますが、言葉で説明しても、それはうまく言い表すことができないということが、最初から分かっています。言葉にならないけれども、それでも言わなければならない、という論法になっています。
覚りの真実を表そうとすると、言葉を極限まで変形して、日常的・常識的な用法では捉えられないような仕方で、説明しなければならない。ここに、「空」の論理が展開される背景的要因があります。