■内需型と外需型、ナショナリズムの二類型
- 作者: 中野剛志,三橋貴明,柴山桂太,施光恒,森健
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/06/28
- メディア: 単行本
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森健『反動世代』講談社
森健様、ご恵存賜り、ありがとうございました。
中野剛志、柴山桂太、三橋貴明、施光恒の四人に対するインタビューから成り立っている本です。反動世代というタイトルですが、穏健な反グローバリズム、ナショナリズムの政治を求める動きを指しているようです。
日本は外需主導の国である、という理解に立てば、とにかく日本の経営者たちが、中国や韓国の経営者たちと競って、グローバルな経済競争に勝つ必要がある、ということになります。しかしそうなると、人件費を上げることはできません。
ところが、人件費つまり給料を上げないと、日本人の需要(内需)は拡大しません。ですので、グローバルな競争に勝っても、結局のところ経済成長しないかもしれません。経済成長のためには、かつてヘンリー・フォードがしたように、給料を二倍にすると言って、内需オンリーで経済を回していく必要があるかもしれません。
はたして、外需主導か、内需主導か。これが経済イデオロギーの今日的対立構図です。
私の師匠の一人、鬼塚雄丞先生は、かつて経常収支のサイクル説というものを理論化しましたが、日本もこれから、サイクルとしては赤字に転化して、例えば80年代のアメリカのような、双子の赤字状況になるかもしれませんね。80年代と言えば、アメリカでは反日感情が拡大した時期でもありましたが、類似の状況がいま、日本における反中国・反韓国感情として現れているのかもしれません。
そのような感情を「よし」として、とにかく賃金を上げて、円の国際的地位を低くして、内需拡大でいく。そうした立場が右派なのか左派なのかと言われると、どちらでもあるわけですが、対立の構図としては、内需型のナショナリズムと外需型のナショナリズムが拮抗しています。外需型のナショナリズムからすれば、とにかく賃金を上げずに雇用を守る、日本の熟練労働者を長期的観点から育てて産業の空洞化を防ぐ、外需主導でグローバル競争に勝つ、といった戦略を唱えることになるでしょう。