■乳児期の母親の愛情は重要か

絆の構造 依存と自立の心理学 (講談社現代新書)

絆の構造 依存と自立の心理学 (講談社現代新書)


高橋惠子『絆の構造 依存と自立の心理学』講談社新書

高橋惠子様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 アメリカにおける、1991年生まれの1300余人の子どもを対象とした調査では、一日の数時間を保育所などの施設で育てられた子ども(「非家庭児」)と、家庭だけで育てられた子ども(「家庭児」)のあいだに、発達上の差はあまりみられないようです。
 乳児期(生後12か月前後)に、愛着を持って育てられた子どもが、その後、青年期(17-23歳)まで、継続的にその愛着を保持するかどうか(愛着の質が連続しているかどうか)については、一致率が77%の調査もあれば、39%しかない調査もあるようで、実証に乏しいようです。
 札幌市で著者が行った調査では、乳児期と青年期で、二時点とも同じ愛着の質のグループであった者の割合は、57%にすぎませんでした。
 乳児期に、養育者(母親)を恐れて育った子どもは、大人になって養育者(母親)になった場合に、やはり子どもから恐れられる(あるいは子どもを恐れる)のかと言えば、そのような関連は弱いものであることが、ある研究結果によって示されています。
 すべてこうした実証は、乳児期における母親の愛情が、人生の質を必ずしも決定しないということを示しているでしょう。