■他国経済を刺激するというケインジアン政策


ケインズは、《今》、なぜ必要か?――グローバルな視点からの現在的意義

ケインズは、《今》、なぜ必要か?――グローバルな視点からの現在的意義

ケインズ学会編、平井俊顕監修『ケインズは、《今》、なぜ必要か?』作品社

平井俊顕様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 伝統的なケインジアンの政策では、家計が貯蓄願望を高めているとき、また、企業が投資に乗り気ではないとき、政府は自らの支出を増大させることで、あるいは税を下げることで、家計と企業の経済活動を刺激できるとされます。
 しかし、金融危機に対処するために、政府がすでに多額の債務を抱えてしまうと、その債務こそが経済を停滞させるための原因であるとみなされます。こうなると、政府は自国の家計と企業の活動を刺激するための政策を打つことができません。
 こうした事態に対処するために、クレーゲルは、他国(金融危機に巻き込まれなかった諸国)の家計を刺激して、自国から他国への輸出を拡大することが、一つの解決策になると考えます。そのために他国の政府の債務を増やして、他国の経済を刺激する、という方法が考えられます。すべては国際協調によって諸国の財政赤字をうまく拡大することができるかどうか、その協調がもつ政治的な信用にかかっているといえるでしょう。
 一般には、内需を刺激する方法がケインジアンであるとみなされますが、輸出に頼る方法もまた、国際協調的なケインジアンの政策になるというわけですね。