■政権が危うくなるのは戦争開始から二年後


介入するアメリカ: 理念国家の世界観

介入するアメリカ: 理念国家の世界観

中山俊宏『介入するアメリカ』勁草書房

中山俊宏様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 ヴェトナム戦争イラク戦争に共通する点は、開戦当初の世論調査で、「戦争の判断は間違っていた」という応答が、20%程度であったということ。またその約2年後に、50%程度にまで上昇している、ということです。
 ということは、いずれにおいても、戦争開始から約2年後に政権が危うくなった、というわけですね。しかしこの二つの戦争を比較すると、「軍指導部を大いに信頼する」という評価については、最初はそれぞれ60%程度であったものの、ヴェトナム戦争のときは5年後に27%まで下がるのに対して、イラク戦争のときは、5年後になっても47%程度の評価であり、それほど下がりませんでした。アメリカ人は、軍部を信頼するようになったということですね。
 「イラク戦争は順調に進行しているか」、「アメリカはイラクに駐留し続けるべきか」といった質問についても、2007年から2008年にかけて、死傷者が減り治安状態が回復すると、アメリカ人の世論は好転しています。
 アメリカがイラク戦争を開始したとき、世論はどちらかといえば戦争に反対でした。それでもアメリカ国民は、アメリカ軍が戦争をうまく戦って、現地の治安を回復させることができるだろうと期待したのでしょう。また当時の国際世論も同様に、アメリカが他国に軍事介入することの正統性を疑いましたが、その後の治安回復に向けてのアメリカの努力については、これをプラグマティックに評価するという態度に変化しました。こうしてアメリカの軍部に対する信頼は、戦争の正当性とは別に、任務遂行についてのプラグマティックな正当性を獲得するようになったということでしょう。