■伝統とは淘汰圧に耐えた革新のこと

与古為新(よこいしん)―南からの社会学・インタビュー編

与古為新(よこいしん)―南からの社会学・インタビュー編

櫻井芳生『与古為新』南日本新聞

櫻井芳生様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 「南からの社会学・インタビュー編」と副題のついたこの本は、鹿児島発のインタビュー集です。かなり気合の入った濃密な本ですね。鹿児島の方々の魅力が伝わってきます。
 インタビューした方に、他の方を紹介していただくという芋づる式のやりかたで、さまざまな分野で活躍されているすばらしい人に出会い、輪を広げていく。政治家、実業家、陶芸家、格闘家、養殖漁家、修道女、アナウンサー(櫻井先生の教え子?)、パイロットなど、いろいろな分野の方へのインタビューを含んでいます。
 陶芸家の15代、沈壽官さん(本名は、おおさこかずきさん)の陶芸作品は、写真で見るかぎりですが、かなり洗練されたものですね。早稲田卒、京都の陶工高専卒、イタリア国立美術陶芸学校卒、大韓民国にてキムチ壺制作の修業、という大変な修行の履歴の方です。
 「伝統というのは、革新的なイノベーションの堆積物なんですね。・・・淘汰されたものは中には残っていないわけです。」
 そういう意味で、伝統に敬意を払うとは、革新に敬意を払うということなのですね。