■STAP問題を生み出す「鉄の檻」
- 作者: 仲正昌樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/08/19
- メディア: 新書
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仲正昌樹『マックス・ウェーバーを読む』
仲正昌樹様、ご恵存賜り、ありがとうございました。
ウェーバーの基本的な文献の内容をまとめた入門書です。
「ウェーバーとSTAP細胞問題」を興味深く読みました。現代において、ウェーバーのいう「鉄の檻」とはなにか。それはSTAP細胞問題があぶり出したように、大学の研究環境である、という理解ですね。
若い研究者たちは、常勤職の地位を得るために、任期付きのポストで、業績競争に駆られます。理系のように多額の予算を使って、早急に結果を出すようにプレッシャーをかけられるところでは、研究をねつ造したり、実験結果を確証するプロセスを省いたり、他人の論文を盗用したり、などといったことが起きやすくなります。
業績の評価や、研究助成金の分配は、同業研究者たちのあいだでなされるという意味では、けっして政府が上から(外部から)研究をコントロールしているわけではありません。ですが、こうした内部的な合理化を徹底的に進めると、かえって研究の質を低下させてしまうことになるのではないか。研究をでっちあげる確率が高まるからです。
こうした「でっちあげ」のリスクを考慮しても、現在の研究体制は、昔の研究体制よりも、生産的だと言えるかもしれません。ただそれは、やはり分かりませんね。どうも最近、どの国でも、大物の思想家があまり生まれていないような気がします。「鉄の檻」の結果として、すぐれた研究者でも、同じような研究をいろいろな仕方で出版する、ということが起きているのではないでしょうか。