■相続税は文明を崩壊させる?
- 作者: 根井雅弘
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 2014/06/28
- メディア: 単行本
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根井雅弘編『ブックガイドシリーズ 基本の30冊 経済学』人文書院
根井雅弘様、神野照敏様、藤田菜々子様、若森みどり様、ご恵存賜りありがとうございました。
ハロッドはケインジアンの立場から、資本主義の発展とともに「利子」がゼロに近づくと考えました。
そのような状況の下で、「金利生活者」たちが没落することを歓迎しました。
ところが他方で、上流階級者がいなくなったら、文明が崩壊するのではないか、と危惧しました。それで相続税については、これを撤廃すべきだと主張したのです。
現代の視点から考えると、賛成できませんね。
まず利子がゼロになるというわけではなく、資本収益率はある一定の水準を維持しているようです。資本収益率が一定の水準を保つのであれば、そしてまた、低成長経済の下では、資本(富)は累積的に膨らみます。富める者はますます富むことになるでしょう。
そのような状況においては、格差を是正するために、相続税を強化したほうがよいはずです。相続税は、上流階級者を崩壊させるのではなく、その継承を崩壊させます。
では上流階級の子息たちが親の富を継承しない場合、文明は崩壊するでしょうか。
文明の進歩を、上流階級の子息ではなく、別の人々によって企てるような、そういう国家を構築できるかどうかですね。そうでなければ、社会は圧倒的な富の格差に耐えることができず、革命が起きるかもしれません。あまりにも大きな格差の下では、国家は統治力を失ってしまいます。
上流階級がその子孫によって継承されずとも、国家主導によって文明を進歩させる。それがどこまで可能なのか。相続税を強化するためには、合わせてこの問題に応じる必要があるでしょう。