■戦争と巨大科学と大きな政府の三位一体


知識の社会史2: 百科全書からウィキペディアまで

知識の社会史2: 百科全書からウィキペディアまで

ピーター・バーク『知識の社会史2 百科全書からウィキペディアまで』井山弘幸訳、新曜社

井山弘幸様、ご恵存賜りありがとうございました。

 とても博学な人ですね。断片的なエピソードをこれだけたくさんまとめていただくと、人類が知識とどのようにかかわってきたのかについて、巨視的な視点で考えさせられます。自分もその一人として、ただ知識を集めたり伝えたりするという営みの一端を担っているにすぎないのだということを思い知らされます。
 ウィーナーがサイバネティクスを開発したのは、高速で運動する標的に対空高射砲を命中させるために、機械に対していかに教え込んだらいいのか、という問題を研究しているときでした。
 アメリカでは第二次世界大戦中に、連邦政府は毎年科学研究のために五億ドルをつぎ込んだのですが、これは平時の約10倍でした。アメリカでは戦争を通じて、「巨大科学」と「大きな政府」が同時にやってきたのですね。政府による科学への援助は1945年以降も続き、冷戦によって推進されたのでした。