■デザート主義の再編可能性はある

ロールズとデザート―現代正義論の一断面 (新基礎法学叢書)

ロールズとデザート―現代正義論の一断面 (新基礎法学叢書)

亀本洋『ロールズとデザート』成文堂

 亀本洋様、ご恵存賜り、ありがとうございました。
 本書(第四章のむすび)には次のように記されています。
「私としては、現時点では、ロールズの格差原理を高く評価する一方で、ロールズのようにデザート原理を切り捨てるという勇気もない。要するに、結論めいたものは何もない。読者には、私が何を言いたいのか、分かりにくかったかもしれない。お詫びするほかない。」(150頁)
 これが本書の結論なのですね。このようにあらかじめお詫びされると、「いったいなにを主張したいのですか」というコメントも挫かれてしまいます。
 デザート論は、これをうまく再検討して体系的に構築すれば、あらたに「デザート主義の規範理論」を提示できるのではないか、と直観的に思いました。デザート主義の政治論、デザート主義の経済論というのは、ありそうで、ないのですね。規範理論としてのデザート論は、社会主義計画経済を擁護する危険なものか、でなければ断片的なものとして散逸しています。誰かが先ず、この単純な原理を資本主義経済の現実に即して、規範的かつ体系的に主張すべきであり、そしてその理論的な射程の限界を見定めることが重要である、と思いました。