■私はリンゴを食べる、ゆえに土壌もいっしょに食べる


システム思考をはじめてみよう

システム思考をはじめてみよう

ドネラ・H・メドウズ『システム思考をはじめてみよう』枝廣淳子訳、英知出版

枝廣淳子さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

「この新鮮なリンゴ、朝露がついて冷たくサクサクしているこのリンゴは、私が食べるまでは 私ではありません。私がこのリンゴを食べるとき、リンゴを育てた土壌も 食べることになります。私が水を飲むとき、地球の水が 私になります。息を吸い込むたびに、私は 私でないものをとりいれ、私にします。そして、息を吐くたびに、私ではないものの中に 私を出すのです。」70頁。

 この考え方は、所有についての小生の考え方とほとんど一致します。読んでビックリしました。
所有について考えてみると、例えば私が、私の血を海に流し入れたとき、はたして海は、私の所有物になるのでしょうか。法律では「所有物にならない」とされますが、なぜそうなのか、はっきりしません。
 論理的に筋が通った一つの考え方は、海も水も空気も土壌も、すべて私たちの身体の拡張であって、共有されているという発想です。
さらに、次のように考えることもできます。私が吐いた空気の一部を吸っているあなたは、すでに私のモノであり、私はあなたの吐いた空気を吸っているのだからすでにあなたのモノである、と。
 人々のあいだの境界線や共同性を、たんに感覚的に理解するだけでなく、こうして物理的に考えてみることは、所有関係を規範理論的に検討し、また正統化するための重要な手続きであるかもしれません。
呼吸によって私の体内に取り込んだ空気は、はたして私のものなのか。私のものであって、誰のものでもない、という発想は成り立たない。すると同じ論理でもって、私の体を流れている水分も、私のものではないことになる。このような発想を続けていくと、所有の共同性が、新たな次元で見えてきます。