■資本主義に対抗するミニマリズム

〈資本論〉第2巻・第3巻入門

〈資本論〉第2巻・第3巻入門

デヴィッド・ハーヴェイ『〈資本論〉第2巻・第3巻入門』森田成也・中村好孝訳、作品社

森田成也様、中村好孝様、ご恵存賜りありがとうございました。

 「『資本論』の第二巻はその大部分が、マルクスが自分の経済学研究の全体に押しつける傾向にあった「皮相な三段論法的」枠組みのもとで書かれている。彼がこの枠組みをあえて超えようとすることはめったにない。彼が描き出すこのような理論的世界は、たしかにいくつかの点では長い射程を有し啓発的であるが、その他の点では著しく制限的なものである。」(58頁)
 ハーヴェイはしかし、この第二巻を読むことが報われる作業だ、と解説しています。
 訳者解説では、この第二巻を理論的に発展させるための三つの可能性について語られていますが、そのなかの一つに、資本主義がいわば資本の論理によって、消費者(労働者)の欲望を生み出していくことについての解明があります。テレビ、洗濯機、冷蔵庫、車、パソコン、携帯(スマホ)、等々。こうしたものを私たちが必需品であるとみなすにいたるのは、資本主義によって私たちの欲望が実質的な包摂されたからである、ということになります。
 労働者をいっそう勤勉に働かせ、消費者にいっそう多くの必需品を売りつける。これが資本主義の論理であり、また倫理でもありうるとすれば、脱資本主義の倫理とは、資本の論理に包摂されない仕事をすることであり、また、資本の論理によって必需品とされているものを、「なくてもいい」と理解して捨ててしまうことですね。このような生き方が、脱資本主義の論理であり、倫理であるということになる。
 これは実際、最近の消費ミニマリズムにおいて生じていますね。ミニマリズムとは、資本の論理に抵抗する生き方であります。しかしそのような生き方が、現代においてはマルクスを論じる知識人によって主導されるのではなく、マルクスや左派とは無縁な、さまざまな人たちによって実践されているというのも興味深い社会現象ではないでしょうか。