■無利子銀行は株式会社のようなもの

クルアーンを読む (atプラス叢書13)

クルアーンを読む (atプラス叢書13)

中田考橋爪大三郎クルアーンを読む カリフとキリスト』太田出版

橋爪大三郎様、ご恵存賜りありがとうございました。

 イスラム諸国では最近、無利子銀行が盛んに作られているわけですが、その実態は、論理としては「株式会社」のようなものだというわけですね。無利子銀行は、会社にお金を貸すのではなく、お金を無利子で出資するという。それで儲かった場合は、その利益の一定割合をいただくことにする。
 しかしこれは普通の銀行がやっていることと同じでしょう。にもかかわらず、なぜ「無利子銀行」という名の銀行がたくさん設立されているのか。
 無利子銀行が一番盛んな国は、マレーシアとかインドネシアであり、これらの国では、しかしイスラムの力が弱いというのですね。イスラムの正当性が弱いところで、偽物の無利子銀行が作られている。
 これは興味深いです。湾岸諸国では、あまりイスラム銀行というものはなく、銀行業は外資系が多い。
 イスラムの諸学派のなかで、この無利子銀行を認めるかどうかということは、論争になってもよさそうですが、しかし本質的なところでは、イスラム教は、法人という概念を認めない。また株券を信用で買うことも認めない。この点ははっきりしている。だからイスラムの法学者たちは、こういう問題に対しては、「ただ目をつぶっている」というのですね。口に出すと危ないので、口に出さないのだと。
 イスラム教に基づくかぎり、自由な経済活動に法的な正統性を与えることは、難しそうですね。