■再生エネルギー電力の固定価格買取制度は失敗だった

ドイツの挑戦 エネルギー政策の日独比較

ドイツの挑戦 エネルギー政策の日独比較

吉田文和『ドイツの挑戦 エネルギー大転換の日独比較』日本評論社

吉田文和様、ご恵存賜りありがとうございました。

 日本では2012年から再生エネルギー電力の固定価格買取制度が導入(実施)されましたが、それから2年たって、認定を受けた太陽光発電は、全体の95%を占めたのですね。
 ところが運転開始率は、二割程度に過ぎないというわけですね。
もし100%稼働したら、既設の発電設備容量を上回ってしまう。だから再生可能エネルギーの供給を抑制せざるをえないのだと。
問題はそもそも、この買取制度(FIT)に根本的な問題があったに違いありません。
 まずこのFIT制度の買取は、具体的な数値目標があいまいで、しかも買取は、原子力とのミックスで考えられてきた。原子力発電をなくしてまで、買取はしない、ということになっていた。
また、再生可能エネルギーの送電網への優先接続が、保証されていません。いつで技術的な理由で、再生可能エネルギーの接続を拒否できることになっている。これでは再生可能エネルギーを供給する会社は、リスクが大きくて慎重になってしまいますね。
 最大の問題点は、太陽光電力の買取価格設定が、ドイツの二倍であり、それが太陽光エネルギーの供給バブルを招いてしまったことでしょう。政府は価格設定に失敗したのであります。
 また、もし認可された事業者が実際に再生エネルギーを供給しなかったら、しかるべき時点で認可を取り消すべきなのですが、「実際の事業は後でもよい」という、「空押さえ」を許すことにしてしまったのですね。
 これでは事業者は本気で供給するためのインセンティヴを失います。後で導入したほうがいっそうコストダウンできるでしょうから、どうしても導入に遅延が生じてしまう。後知恵でいえば、最初に買取価格において、変動の余地を残して制度設計すべきでした。
 もちろん、社会主義経済計算論争において問題になったように、オスカー・ランゲのいうような価格の試行錯誤を政府主導で行う場合にも、やはり問題が生じるのでしょう。はたして再生エネルギーの供給は、価格の人為的な変動によって最適化されるのかどうか。本当は、この次元で政策を争うべきところであったと思います。ランゲのいっていることは、実践的に有効なのかどうかです。