■ポストケインジアンは、アベノミクスの代替案をもつのか
- 作者: 諸富徹,大澤真幸,佐藤卓己,杉田敦,中島秀人
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2016/02/25
- メディア: 単行本
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鍋島直樹様、ご恵存賜りありがとうございました。
ポスト・ケインジアンの見方では、金融化が進むと、投資支出が停滞する。所得分配も不平等になる。するとさらに、消費支出が減る。こうしてつまり、金融化は、消費の減退をまねくというわけですね。
消費の減退を抑えるためには、政府が諸企業を指導して、名目賃金を引き上げるように要請する政策が有効になります。そのためには「よく組織された労働組合と経営者団体とによる全国レベルでの集権的な賃金交渉制度が必要」というわけですね(73頁)。
あわせて最低賃金制度における最低賃金も、引き上げる必要があると。
目標としては、名目賃金の引き上げが、生産性上昇に目標インフレ率を加えたものに等しくならなければならない、ということになります。
しかしこの政策を実現するためには、企業内部での賃金交渉に政府が干渉するという、マクロ的なコーポラティズムの体制を復活させる必要がありますね。それから、目標インフレ率が、本当に達成される必要がありますね。政府がこのインフレ政策に失敗すれば、名目賃金の引き上げは、企業の収益を悪化させてしまいます。
いま私たちが直面しているのは、金融緩和とコーポラティズムによるこのインフレ・ターゲット政策が、機能していない、という事態です。この場合、ポスト・ケインジアンは、どのような代替的政策を提案するのでしょう。