■ルーマンで分析する食の安全

畑山要介「食の安全・安心をめぐるリスクと信頼」『現代社会学理論研究』第10号、所収

畑山要介さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 ルーマン社会学的洞察を応用したシャープな論文だと思います。認証型の制度(有機認証など)は、一方では不信を生みだしつつも、それを不可視化するような信頼を生み出すメカニズムを組み込んで、開かれた市場において広範な消費者を獲得するというのは、興味深い現象です。
 ただ、そこで認証に利用される手法が、参加者認証制度のように、提携型の取引の手法を取り入れたものだとすれば、それはポランニー的な「内面的見通しの確実性」を取り込んでいるのであり、「共有モデル=提携型」が、利用されているということでしょう。やはり「確実性への問い」が入り込んでいるのでしょう。
 これ以外の方法としては、ある外部の消費者団体が、各種の認証制度を評価していくことが考えられます。これはポランニー的ではなく、外的で批判的で科学的な見通しです。しかしそのような評価は大変なコストがかかるでしょうから、だれが負担するかですね。
 消費者が「美味しいものを食べたい」とか「危険なものは食べたくない」という選好をもって有機認証を信頼する場合、これはリスクの問題です。しかし有機農家を応援したいとか、フェアな仕方で農家に支払いたいという選好をもつ場合は、モラルの問題です。有機認証は、モラルの問題をリスクの問題に置き換えているわけではなく、やはりモラルの問題でもある。この点は、消費者の意識調査に依存するでしょう。