■北一輝とGHQ。いずれもリベラリズム。

面白くて眠れなくなる社会学

面白くて眠れなくなる社会学

橋爪大三郎『面白くて眠れなくなる社会学PHPエディターズ・グループ

橋爪大三郎様、ご恵存賜りありがとうございました。

 北一輝は、2.26事件の黒幕であり、最後は処刑されました。戦前の右翼思想の大物とされます。けれども北一輝のビジョンは、リベラリズムだ、というのですね。
 北一輝はまず、私有財産を人間の自由の基礎として擁護します。
 言論の自由と出版の自由も擁護します。
 その上で、社会的正義の実現のために、農地改革でもって大地主制度を解体し、農地の所有を一定水準に抑えることを提案します。これは経済的自由主義ではありませんが、リベラリズムの思想に基づく提案と言えますね。
 また北一輝は、株式会社について、これを一定規模まで認めますが、それ以上に大きな会社については解体すべきだ、と主張します。財閥による経済的な支配力を弱めるためですね。これもリベラルな発想です。とはいっても、北一輝は基本的には、市場経済を基本とした社会を構想しています。
 するとどうでしょう。
 これら二つの主張は、戦後、GHQが行ったこととそっくりではないでしょうか。
 北一輝GHQも、リベラリズムの思想に基づいて、日本の将来像を描くことができました。この思想を規範的観点とすれば、農地改革と財閥解体というこれら二つの政策は、間違っていなかった、ということになるでしょう。